<はじめに> 小学生のサッカー指導者から熱中症の注意をするにあたっての、熱中症の最低限の知識を、平易かつ短くまとめてくれと頼まれました。 以下の文はほとんど医学書からで、一部は私の基本的考えです。
<知識> @生命の存続が危険になるのは温度、湿度、栄養物などの外的条件がそろわない場合と、細胞自身の内的条件が異常をきたす場合である。 例えば、熱中症や飢餓が前者で、癌が後者である。 前者は外的条件に配慮をすると危険を防止しやすい。
A人の体温は動揺するがほぼ一定であり、人は恒温動物である。 生命維持のために、体温上昇の時、熱を体外に出しやすくし、体内で熱産生低下さす。 また、体温低下の時、熱を体外へ出しにくくし、体内で熱産生高める。
B人は生物であるが、物理的な機序を受ける物体であることを忘れてはいけない。 環境温が体温より高いと体に熱が入り、環境温が体温より低いと体より熱が出る。
C一般に運動や仕事を多くするほど、筋肉から熱が産生される(Fennの効果)。 そして乳酸が溜まるような激しい運動では、運動をやめても筋肉は熱を産生し続ける。
D体内で産生された熱は皮膚から体外へ移動するか、汗を気化することでコントロールされる。 この時、皮膚血管は拡張し深部臓器の血管は収縮する。 また、汗も湿度の高い時や、仕事や運動の時間が長くなると発汗量も多くなり水分と塩分の補給に誤差が生じやすくなる。 そして体の調節範囲を超えると熱中症の症状が出てくる。
E暑さに対する適応は個人によって異なる。また同じ人でも久しぶりの運動や仕事では汗の量や汗の塩分濃度が異なる。 久しぶりの大量の汗は、脱水や電解質異常がおきやすい。
F体は程度の軽い負担に対しては症状はなく改善するが、程度の重い負担に対しては代償作用が働かないと障害がおきやすい。 熱中症では少ない発汗量の場合のどが渇いて水分のみを補っても腎臓が体液異常を起こさず補正する。 多い発汗量の場合はのどが渇くと汗の成分である塩分も水分とともに補うと障害がおきにくい。 このときの塩分量は正確な量を判断するのが不可能であるから、体液異常の進行を防ぐというおおまかな考えでよい。
G一般に体は悪化させるものと、それを改善させるものとの戦いである。 ただ熱中症では頻度が少ないが限界を超えると悪化のスピードが交通事故のように速い場合がある。 しかも事故のように外から判断できないため、緊急の判断ができなくて治療開始が遅れることがある。
<終わりに> 平成21年12月京都女子大学教授 中井誠一先生から、 防ごう熱中症(日常生活での暑さ対策のススメ) という冊子をいただいた。 24ページの小冊子で多くの研究者たちにより製作されていた。 一般の人は自分の知識と感覚で熱中症に対処したいと考えており、自分の応用力を高めるためにわかりやすくて短いページの本を好む。 この小冊子はその人達にとって参考になる。 中井先生は、「私どもは熱中症予防活動に積極的に取り組んでいく。」と手紙に書かれており、熱中症予防という道を歩いておられる先生方に私は敬意を持ちました。 |